ホワイトリボンラン2019レポート「走ろう。自分のために。誰かのために」【前編】

3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」。女性の社会参加や地位向上などに向けて話し合い、行動を呼びかける日です。今年の国際女性デーを前に、国際協力NGOジョイセフは3月2日、3日の2日間、チャリティランニング大会「White Ribbon Run 2019」を開催しました。

今年で4回目となるホワイトリボンランは、妊娠・出産・中絶で命を落とす女性をゼロにするため、支援の輪を広げることを目標としています。参加費の半分は、世界の女性たちの命を守るための活動に充てられ、今年はケニアとザンビアでの活動に使われることになりました。今年のホワイトリボンランの参加者は全国38拠点で延べ2484人、個人で走る「どこでも誰でもバーチャルラン」を加えた総参加者数は計3208人となりました。


全国の拠点では、I LADY.アクティビストとして日頃からジョイセフとともに活動している歌手で俳優のダイアモンド☆ユカイさん(広島会場)、歌手の大島花子さん(岡山会場)などの著名人ゲストランナーに加えて、各地のゆるキャラや協賛企業などが参加者を応援しました。

これらの参加者による寄付額の合計は、512万円となっています。また、海外でも英国やイタリア、ケニア、ザンビアなど13の国と地域でランが行われました。

また、2月1日から31日までの間、「SNSで女性支援キャンペーン」も行われています。これは、アンダーアーマーの無料スマートフォンアプリ「Map My Run」を使い、「#女性に力を」などのハッシュタグを付けてSNSで画像を共有すると、アプリを提供するアンダーアーマー(株式会社ドーム)より1人当たり1日1投稿につき100円がジョイセフに寄付されるものです。

ラン発起人の小野美智代(ジョイセフ市民社会連携グループ長)は、東日本大震災の被災者支援時に、ある被災女性の「子どもを守るためには、親である自分が健康でなければならない」という言葉をきっかけに走り始め、育休中の2015年3月8日に「今日は国際女性デーなので、世界の女性のために走ります」というメッセージをSNSで発信しました。そのメッセージが多くの人に共有され、女性のためのランの輪が広がっていくのを目にしたことが、女性のために走るイベント「ホワイトリボンラン」の立ち上げにつながっています。2016年の第1回以来、これまでに累計8393人日本のランナーが自分と世界の女性のために走りました。

米国のトランプ政権は、共和党政権が過去にも導入してきた「メキシコシティ政策(グローバル・ギャグルール)」を再導入し、人工妊娠中絶の実施や中絶に関する相談サービス、中絶規制の緩和などに取り組むNGOへの資金援助を停止しました。これは、避妊の知識や手段を持たない途上国の女性たちが望まない妊娠をした時に安全でない違法中絶を選ばざるを得ないなど、女性たちの命を危険にさらす政策です。世界では妊娠・出産・中絶が原因で、1日に830人の女性が亡くなっています。このような女性の死をなくすため、これまで以上に支援が必要とされています。

【東京有明ウィメンズ会場】

3月2日は東京で、有明5kmランが開催されました。昨年までのお台場会場から場所を変え、豊洲市場の遊歩道が今年のコースです。晴天に恵まれた当日は、111人のランナーがアンダーアーマー・ブランドハウス有明に集合しました。

ラン開始前には協賛企業のブースが開かれたほか、プロのフォトグラファーによるランナー一人ひとりの記念撮影なども行われました。


東京有明会場限定でコスメブラントTHREEによるメイクのタッチアップ


ROOTOTE「ルー・ガービッジ」のサンプリング

この日の会場には、スペシャルゲストとしてニューヨークを拠点に活動しているランナーで、女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツのために連帯して走るキャンペーン「Run 4 All Women」を主宰するアリソン・マリエラ・デシールさんが登場。

「女性に力を」をモットーに活動するアリソンさんは、同じランナーとして、「今日は楽しんで走り、新しいお友達を見つけ、よい思い出を作ってください」と参加者を激励しました。

 株式会社ドーム(アンダーアーマー)DNS Womanアドバイザリーインストラクターの伊賀真奈美さんによるエクササイズの後、参加者は豊洲ぐるり公園に移動。

穏やかな潮風を受けながら公園を走りました。当日、公園では地元の皆さんや家族連れ、一般ランナーなどが週末のひとときを過ごしており、参加者たちに熱い声援を送ってくれました。

ラン終了後は、再びアンダーアーマー・ブランドハウス有明にて、産婦人科専門医でヨギーニでもある高尾美穂先生によるヨガのセッションを受け、心と体をほぐしました。

体を動かすセッションが終わった後は、ゲストによるトークショーです。この日は、アリソンさんと高尾先生のトークに加え、ジョイセフ・アンバサダーを務めるモデルの冨永愛さんと、モデルでヴィーガン・ペイストリー・アーティストの長谷川理恵さんによるスペシャルトークショーが行われました。

現在妊娠中のアリソンさんは、「5年前、生きる気力を失った時に走り始め、走ることで社会とつながり、力を得られることを実感しました」と、自身にとっての走る意義を説明。「スポーツは自信を与えてくれます。私は走ることで、体だけではなく人生も変わったんです。その経験が、多くの人とのランニングセッションにつながっています」と語りました。

一方、高尾先生は「スポーツしない人も、スポーツしている人を見ることで何かを得ることができます。さまざまな強みがあるのです」と強調。また、アリソンさんが「走ることはリプロダクティブ・ヘルス/ライツと同じ。女性が自らの意思で、自分の体をコントロールするということだと思います」と話すと、高尾先生も、「世界では1日830人が妊娠・出産関連で亡くなっていますが、日本でも年に約30人の妊産婦さんが亡くなっています。お産は決して安全ではありません。いつ産むかの判断を女性が決められることも重要ですが、日本では女性が自分で選ぶための方法に対するアクセスが十分ではないと感じます」と、産婦人科医ならではの考えを示し、世界はもちろん、日本におけるリプロダクティブ・ヘルス/ライツ啓発の重要性を強調しました。

冨永愛さんと長谷川理恵さんのスペシャルトークでは、はじめに2012年に女性誌「VOGUE」が展開し、お二人が日本を代表する女性モデルに選ばれた「ザ・ヘルス・イニシアティブ」プロジェクトを取り上げました。

これはモードの世界が健康を損なってまで痩せた女性や、未成熟な若いモデルを「女性の理想のボディ」と思わせるような発信をやめ、「美と健康は不可分である」という信念に基づく紙面づくりや健康的な食習慣を推進するプロジェクトです。

同プロジェクトの発信から7年経った現状について、冨永さんは、「若すぎたり摂食障害があったりするモデルを使わない一方で、ビッグサイズのモデルや90歳のモデルなど多様性を反映したモデルが採用され、“不健康に痩せている人がきれいだ”というイメージを変えようとしています」と語りました。

長谷川さんは「かつては私自身も食べないで痩せるという選択をしていましたが、テレビの企画でマラソンに参加し、走る楽しさに目覚めるとともに、食べることの大切さに気づき、野菜ソムリエの資格を取るなど、食と運動を取り入れるようになりました」と振り返りました。

その上で、普段の生活習慣について、「エネルギーを保つ必要がある仕事をしているので、普段から運動を心がけています。運動すると体が何かを欲しがったり、逆に何かを食べると体調が悪くなると気付いたりすることがあるからです」と話す冨永さんに対し、長谷川さんは「2000年に初めてマラソンを走って以来、運動・食事・睡眠のバランスに気をつけています」と明かしました。その上で、「女性のランナーが増えてよかったと思います。こうした大会に出場することで、自分の健康のためにも、誰かのためにもなるので、ぜひ今後も続けてください」(長谷川さん)、「自分のため、何かのために行動するのは素晴らしいこと。行動しようと自分で決めるのは大切な一歩です。ジョイセフのことを知ってもらう大きな一歩を踏み出してもらえたことに感謝しています。ぜひ、一人でも多くのお友だちにも伝えてください」(冨永さん)と参加者を激励しました。

後編に続く