ホワイトリボンラン2019レポート「走ろう。自分のために。誰かのために」【後編】

ホワイトリボンラン2019 レポート
「走ろう。自分のために。誰かのために」【後編】

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今年の国際女性デーを前に、国際協力NGOジョイセフは3月2日、3日の2日間、チャリティランニング大会「White Ribbon Run 2019」を開催しました。今年で4回目となるホワイトリボンランは、妊娠・出産・中絶で命を落とす女性をゼロにするため、支援の輪を広げることを目標としています。

【大阪women’s会場】
今回、女性だけで走るウィメンズランが初めて開催された大阪。会場となったのは、難波のシンボル・大阪城を望む大阪城公園・太陽の広場です。当日はやや肌寒い曇り空の下、181人の女性ランナー(エントリー数は233名)が集まりました。広場には大阪府や協賛企業のブースが立ち並び、ランの参加者以外の皆さんも立ち寄ってくれました。

オープニングセレモニーでは、ジョイセフの小野美智代があいさつ。続いてイタリア車FIATなどの販売を手がけるFCAジャパンのティツィアナ・アランプレセ マーケティング本部長が参加者を激励し、「世界が少しでもよくなるように、日本社会がすべきことはたくさんあります。みんなのため、自分のため、皆さん自身の幸せのため、に力を合わせましょう。女性のための社会は、男性のための社会でもあるはずです」と訴えました。

続いて登壇したのは、大阪が誇る吉本新喜劇の宇都宮まきさん。続いて山田花子さん(ゲストランナー)と、座長の酒井藍さん(スターター)が姿を現わすと、観客から大きな歓声が上がりました。

スタート前のウォームアップでは、インストラクターの山本晃子さんが、軽快な音楽に乗せてソマティックファイティングを指導しました。小雨がちらつく中、吉本新喜劇の皆さんやミスユニバース・ジャパンナショナルディレクターの美馬寛子さん、モデルの立野リカさん、敦子さん、河内セリアさん、東京・有明会場のトークにも参加した長谷川理恵さんなどと並んだ参加者は、酒井藍さんの合図でスタートし、大阪城公園を一周する3.8kmのコースを走り抜けました。スタート地点と給水所では、チアリーダーチームがランナーに熱い声援を送りました。

この日の大阪women’s会場には、世界的に有名な写真家のレスリー・キーさんも駆けつけ、有志のランナーから抽選で50人の撮影セッションを開いたことに加えて、ステージ上から全ランナーを撮影するなど、参加者全員にエールを送って会場を沸かせました。

大阪会場の司会進行を務めたFM大阪アナウンサーの大塚ひとみさんは、最後に「走ろう。自分のために。誰かのために。今日がアクションの始まりの日です」と会場に呼びかけ、「ジョイセフの夢は、女性であることを理由に、誰一人悲しまない世界・未来。そのために、一緒にアクションする友達、仲間が日本全国に広がっていくことです。ぜひ、今日から同じ未来を描く仲間として、つながっていきましょう。アクションをし続けていきましょう!」と訴えて、この日のイベントを締めくくりました。

【参加者の声】

昨年、会社の先輩が参加していたことでこのイベントを知り、今年は会社の仲間と一緒に東京会場やバーチャルランに参加しています。国際女性デーのイベントなので、同じ気持ちの参加者の皆さんと一緒に走り、いい思い出を作りたいと思います。
大蔵さん(東京会場)

女性だけのイベントで、なおかつ参加費がチャリティの募金になると知って参加し始め、今年が3回目になります。多彩なイベントブースもこのイベントの魅力です。今日は職場の仲間と4人で参加したので、楽しく完走を目指します。
さやかさん(東京会場)

たまたま見つけたチラシで趣旨に賛同して、昨年初めて参加しました。走ること自体が好きなことに加えて、走ることで人々のためのアピールができるところが気に入っています。
篠田さん(東京会場)

(友人の篠田さんに誘われて)初めて参加しました。イベントの趣旨が素敵だと思います。初めて訪れる場所なので、走りながら風景を楽しみたいです。
水谷さん(東京会場)

私は普段、自分のイタリアンレストランにジョイセフの活動を支援する「ジョイセフスポット」を設置しています。ホワイトリボンランには以前から興味がありましたが、出産などでこれまでは参加できませんでした。ジョイセフの活動を、一人の母親としていろんな人に伝えていくためには、自分が参加するのが一番だろうと思ったのです。今年は楽しく走りきることを目指し、来年以降も他の人を誘いたいと思います。
上代 美里さん(東京会場)

私もいつもは上代さんとともに、ジョイセフの活動を支援しています。昨年からランニングを始め、今年はスケジュールを合わせて参加することができました。お店にチラシを置いておくと興味を持ってくれる人も多いので、自分が参加すればその経験を伝えられると思っています。まずは楽しく完走したいと思います。
高橋茉莉子さん(東京会場)
 
昨年はバーチャルランに参加し、今年は念願の会場参加ができました。このTシャツを着て、自分の好きなことで少しでも誰かを助けられればと思います。今回は、ランに参加する経験が薄い友人2人も参加しているので、サポートしながら、みんなで完走したいと思います。
みつえさん(東京会場)

 

ずっとチャリティランに参加したいと思っていて、このイベントが時期もよく、走りやすい距離だったので決めました。日本でも、避妊がなかなかできず、気づいたら中絶できる時期を過ぎていて、出産せざるを得なくなった女性を支援する団体の話を聞いて驚いたことがあります。このランに参加したことをきっかけに、他の人にも女性の健康の問題を少しでも伝えていきたいと思います。
紗里(さゆり)さん、佳世さん(大阪会場) 
 
ランニングイベントを探していた時、ちょうどいい距離でかわいいTシャツがもらえるこのイベントを見つけて参加し、2回目の今回は友人を連れてきました。日本でも、女性は出産後、特に子どもが小さい時期は働きづらいなどの課題を解決していく必要があると思います。
ゆかりさん(大阪会場)
 
Facebookの宣伝でこのイベントを見つけ、「母子の健康を支える」という趣旨に賛同して参加を決めました。母子の健康という問題を知ったのはジョイセフの活動がきっかけですが、日本でも産後ノイローゼや産後うつなどの問題を女性が一人で抱えざるを得ず、そのせいで子どもの虐待などにもつながっているのではないかと思うんです。そんな女性たちのために走り、楽しみながら完走を目指します。
尚子さん(大阪会場)
 
昨年、東京会場のランのことを知り、大阪でも開催されると聞いて参加を決めました。世界では10代の子が出産で死ぬことがあるなど、日本では想像つかないことがあると知り、胸が痛みます。今日は楽しんで走りたいと思いますし、それが世界の女性たちのために少しでも役に立つなら嬉しいです。
日本でも、子どもの虐待のニュースを聞くことがありますが、子どもがかわいそうだと思うと同時に、周りがお母さんを支えてあげれば、お母さんたちも自分の子どもを虐待するほど追い詰められなかったのではないかとも思います。周りの人たちが女性の問題に関心をもって、支えてあげることが必要ではないかと思います。
千春さん(大阪会場)

【スペシャルゲストからのメッセージ】

冨永愛さん(モデル、ジョイセフ アンバサダー)
以前、アフリカのタンザニアを訪問したとき、当時の自分と同じ28歳の女性と出会いました。12歳で結婚し、10人の子どもを産んで、そのうち2人は死産だったそうです。出産場所は家の土間で、むき出しの土の上なので、衛生も悪く、とても危険な出産ですし、短い間隔で出産することはお母さんの体にも負担になります。ジョイセフは、子どもがたくさん生まれ、避妊の考えが普及していないこうした国々で活動していますが、実は日本も避妊については語りづらい環境です。ジョイセフ アンバサダーとして、日本でもそうしたことを話せる環境づくりに貢献していきたいと思います。

長谷川理恵さん(モデル、ヴィーガン・ペイストリー・アーティスト、I LADY.アクティビスト)
東日本大震災を機にチャリティランを始め、自分にできることは走ることだけだと思って走り続けています。女性の体について、私自身も若い時を振り返ると相談できる相手がおらず、産婦人科にも行きづらかったと感じます。日本社会も少しずつ変わりつつありますが、今よりもっとオープンに女性の体のことを話せる社会になって欲しいと思います。また、世界では1日に830人の女性が妊娠・出産を原因として亡くなっているという事実は、私も今回初めて知り、驚きました。そのことを知り、女性たちのために走ることを通して、世界の女性を支える活動が広がって欲しいと思います。

敦子さん(モデル、I LADY.アクティビスト)
ジョイセフと出会って以来、タンザニアの訪問など、いろんな世界を見せていただきました。タンザニアではお母さんたちが、物質的には決して豊かでない中でもキラキラと輝いていて、あの心の豊かさを日本も学ばなくてはと感じました。そうした経験がきっかけで自分を見つめ直し、今は助産師を目指して学校にも通っています。
タンザニアのお母さんたちが、物や電気がない中で幸せそうに子育てをしている様子を見て、彼女たちの人生の考え方や、日々の暮らし方に学ばなければと思うようになりました。日本でも、女性の家事の負担が大きいなど、さまざまな課題がありますが、そうした中で自分の人生をどう生きて、どう楽しむかを考えていければと思います。

 
河内セリアさん(モデル、 LADY.アクティビスト)
父方の祖国アルゼンチンでは、貧困層の困窮や性犯罪などの問題を小さい頃から身近に見てきましたが、それは困っている人たちを手助けするのが当たり前という文化でもあり、父も二つの家庭の人たちの面倒を見ていました。日本では、子どもたちの貧困など、国内で起きていることでも、どこか他人事のように捉えてしまう傾向があると思います。もっとそうした問題に目を向け、自分がその立場になったら、苦しんでいる人たちが近くにいたら、という意識を持ち、そうした問題の認知を高めていくことが大切だと思います。
普段の生活で、例えば3食を不自由なく食べられるのはとても幸せなことだ、という気付きが、チャリティの始まりではないでしょうか。自分を犠牲にするとか、お金を送るとか、そうした大げさな慈善行為ばかりをチャリティとして捉えるのではなく、もっと身近な、簡単なことから始めてもいいはずです。また、私のように外国にルーツを持っている人への違和感も少なくなって、さまざまな人が生活しやすい社会に、少しずつ変わっていって欲しいなと思います。
 

立野リカさん(モデル、I LADY.アクティビスト)
以前、ネパールの女性たちの現状を視察する機会があり、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの問題がとても大きな課題になっていると知りました。その時感じたのは、小さい頃から女の子にも男の子にも、きちんとセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスのことを教えていくことが重要ではないか、ということです。教育で得た知識を生かして、必要な時に病院に行き、ピルなどをもらえるようになることが大切なんです。
私が育った米国では、生理について中学校では男女別々に学びましたが、高校では一緒のクラスで授業を受けました。日本では、性や妊娠・出産に関することはタブーでこそありませんが、アメリカに比べて公で話しづらいもの、恥ずかしいものとして扱われている印象があります。産婦人科に通うのも、どこか後ろめたい行為のように考えられてはいないでしょうか。女性の体のことを話しづらい社会では、女の子たちは何に頼り、誰に相談していいかもわからなくなってしまいます。性や妊娠・出産に関して、もっとオープンに話せる社会に向けて、日本にはまだまだできることがたくさんありますが、少しずつでもよい方向への変化が続いていると信じています。

 
ダイアモンド☆ユカイさん(歌手、俳優、I LADY.アクティビスト)
私はセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの認知度を高めるI LADY.のアクティビストとして、また埼玉こうのとり大使として、不妊治療の経験を高校や大学でお話ししています。妊娠・出産に関することは女性だけの問題と捉えられがちですが、私が経験した不妊治療は男女両方にとって同じだけの重みがある課題です。男性だから、女性だからと分けて捉えるのではなく、ジェンダーを超えたところでお互いに考えていくべきではないでしょうか。
また、日本では自然災害が多く、私たちはいつ、どこで自分が被災するか予想はできません。だからこそ、お互いに支え合い、小さなことでもいいので、自分にできることに取り組んでいく必要があると思います。
 

※「Map My Run」とは: ランニング、サイクリング、ウォーキング、ジムでのワークアウトなど、さまざまなアクティビティーの記録が可能なトラッキングアプリです。2月1日から3月31日までの期間にこのアプリを使ってSNSで画像を共有すると、1人当たり1日1投稿につき100円が、株式会社ドーム(アンダーアーマー)を通じてジョイセフに寄附されます。

※I LADY.アクティビストとは:
I LADY. は、特に日本の10~20代にSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)に関する幅広い情報提供を行い、アクションのきっかけをつくるプロジェクトです。I LADY. が大切にしている3つの指針は、Love Yourself(=自分を大切にすること)、Act Yourself(=自分から行動できること)、Decide Yourself(=自分らしい人生を、自分で決められること) 
このプロジェクトに賛同してジョイセフとともに広報・啓発、講義や出演などの普及活動を積極的に行うのがI LADY.アクティビストです。現在、1万人を超えるファンやフォロワーをもつ著名人、幅広いネットワークをもつ起業家、発信力のあるメディア編集長、専門家、女性支援の活動家など約150名のアクティビストが名を連ねています。